結婚したい女と結婚したくない男。
なのに、どうしたことかいつまでもズルズル付き合っている二人。人生の生産性という視点で考えれば、この組み合わせほど不幸なものはないだろう。逆もまた然り。世の中のカップルが全て、結婚したい同士、したくない同士なら、みんな幸せになれるのになあ……。
あたしは、長く付き合った元彼に「結婚したいって言っちゃ駄目」と言われたことがある。その後、結婚の話になると、
「女は仕事から逃げたいから結婚したがる」
「30代の独身でも輝いている女性はたくさんいる」
「女は簡単に結婚したいってい言うけど、男は一生養っていかなければならないから覚悟が違う」
と、ことごとく結婚したがる女はつまらない人間だ、とでも言いたげな発言を、頭ごなしにされた。
どうして元彼がそんなにも結婚したくなかったかっというと、一番はお金。彼が就職した会社が2社とも合併or倒産してしまったのだ。けれども、それもこれも彼の調査不足＆危機管理能力不足。倒産する前に、手は打てていたはず。ま、転職したり勉強したりそういう面倒なことをしてまで、私と結婚したいとは思っていなかったのだろう。
それじゃあ別れようと、私が言うと、
「結婚しないなら別れるっていうのは、理屈がおかしいだろ。俺たちはそんな簡単な仲なのか？」と、お説教。
おいおい…あたしはもう頭が混乱してきた。結婚できない女って、はやく結婚したいと思うのだからそれができないと思うと打算的になるのは当然じゃないか。
勤務先の多難で収入の乏しい元彼なのに、結婚したいとか言うあたしは〝悪い女〟だと洗脳されてしまったのだ。だが、そんなヤワな人間じゃないんだから…あたし。
すぐに洗脳がとけて、
「女が結婚したいって思って何が悪いんだよ！ 」と浴びせて別れてしまった。
こんなあたしは以前、付き合うかどうか微妙な段階だった男に、
「私はものすごく結婚したいと思っている女なの。だから、私と付き合うってことはそういうことだから。」
と宣言したことがある。
その後、その男とは付き合うことになったが、結婚には至らなかった。それでも交際したことは価値があったと思っている。
実は、その男と本当に結婚したかったわけではなかった。あたしが、「結婚したい」と思っていることを受け止めてくれる人じゃないと、お付き合いしたくなかったからだ。つまり、その男は、女の結婚したいという自然欲求を受け止めてくれるタイプではなかったということ。
20代後半になると女性が結婚を焦ることを当然と認めてくれることが、あたしにとってはとても救いになる。恋の場数を踏むとか、恋愛経験値を上げるとか、そんなものはもういい。毎日の24時間を繰りかえすたびに女は〝歳をとる〟のだから……。
「結婚する気がない」相手と付き合って、「結婚しない」のと、「結婚する気がある」けど、なんだかんだあって、結局「結婚しない」のと、結果は同じかもしれないけど、
やっぱり交際中の精神状態は違うと思う。
ここで、その「結婚したいって言っちゃ駄目」と言った元彼の話に戻るのだが、学生時代、あたしとは面識のないバイト仲間の間では、あたしのことを「彼女」と言わず、「カミさん」と言っていた。
学生の若造男子が、彼女のことを〝カミさん〟だなんて…夫婦気取りのわりに、結婚したくないとはこれいかに？ オーマイゴー…あたしには男の心がわからない。恋愛上の亭主関白を気取りたかっただけだろうか？
ところで、あたしがなぜ結婚したいのか？
なぜ結婚できない女であることを人生の負の要素だと意味づけるのか？とその前に、あたしには「なんで結婚したいの？」と聞くのかが不可解なのである。あたしにとって、そしておそらく、「結婚したい」と思っている女性（もしかしたら男性も）の多くにとって、結婚することは、そんな特別なことではないと思う。むしろ結婚は、当たり前のこと、自然なことじゃないだろうか？
例えば、赤ちゃんが成長すると、「友達が欲しい」と思ったり、10代後半になると、「彼氏or彼女が欲しい」と思ったり、そんな当たり前のこととして、社会人になり自立すれば、「結婚して家庭を築きたい」と思うことは自然なこと。
だから私にとって、「なぜ結婚したいのですか？」の答えは「本能だから」となる。つまり、その問いに答えなど存在しない。
女性が「あなたはどうして結婚したいの？」と質問をされた場合、
「女性には出産リミットがあるから、歳とってから子どもが欲しいと思っても遅いから」
と答えるのが一般的かもしれない。
これって、「結婚したいと思わない」女性に、結婚の価値を説くにはいちばんよくわかる理由だと思う。結婚なんてしたくないと考える女性に「結婚願望は本能です」なんて言っても通じない。でも別に説き伏せるためだけの言葉ではなく、「出産したい」っていう気持ちは、本能として「結婚したい」と思うことのひとつの裏づけのような気がするのだ。
よく、結婚に対するネガティブな意見として、
「キャリアがもったいない」
「自由な時間がなくなる」
「独身のほうが遊べるし楽しい」
という声を聞く。
でも……仕事をして、自由なお金や時間がたくさんあって、毎日が楽しくてしょうがない独身生活を送れるとしても、やっぱり自分は、多少苦労をしたり、つまらない人生だとしても、いつかは自分の子どもの顔を見てみたいなと思う。
あたしは、「みんながみんな、結婚するのが幸せ！」って、言いたいわけじゃない。
30代独身でも輝いている人はいる。でもそれはその人の価値観で、あたしは結婚することが幸せなんです。これがあたしの価値観だ。
実はあたし…妊娠率は平均値以下であることが判明している。
絶対妊娠しないというわけじゃない。けれど、普通の健康な女性に比べたら、妊娠する確立は低いのだ。
疾患名は伏せるとして、最近の女性はこの病気になる確立が急激に増えているらしい。考えられる原因として、女性の社会進出で、ストレスを抱える女性が多くなったこと。出産年齢が遅い、または出産回数が減ったことから、生涯で経験する生理の回数が増えたことが言われている。
あたしの結婚願望のピーク時は、体が、「早く結婚して妊娠しないと手遅れになっちゃうよ」と教えてくれたのかもしれない。まさに本能だ――。